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高松高等裁判所 平成5年(行コ)9号 判決 1996年2月26日

徳島県鳴門市撫養町立岩字芥原一一五番地

控訴人

株式会社大塚製薬工場

(以下「控訴人会社」という。)

右代表者代表取締役

大塚明彦

徳島県鳴門市土佐泊浦字福池一三番地一

控訴人

大塚正士

(以下「控訴人正士」という。)

同所同番地

控訴人

大塚静江

(以下「控訴人静江」という。)

右三名訴訟代理人弁護士

田中達也

田中浩三

徳島県鳴門市撫養町南浜字東浜三九の三

被控訴人

鳴門税務署長 冨安泰一郎

右指定代理人

早川幸延

三宅勝治

田所一徳

三谷博之

堤正人

黒田保俊

宮井雅規

主文

一  原判決中、被控訴人が平成三年一月一四日付けで控訴人正士の昭和六二年分所得税についてした再更正処分の取消請求を棄却した部分を取り消す。

控訴人正士の右請求に係る訴えを却下する。

二  その余の本件控訴を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審を通じて、控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が昭和六三年一一月二二日付けで控訴人会社の昭和五九年一〇月一日から昭和六〇年九月三〇日までの事業年度の法人税についてした更正のうち、納付すべき税額三五億二〇七七万八〇〇〇円を超える部分及び過少申告加算税額三二万三〇〇〇円の賦課決定処分を取り消す。

三  被控訴人が昭和六三年一一月二二日付けで控訴人会社の昭和六一年一〇月一日から昭和六二年九月三〇日までの事業年度の法人税についてした更正のうち、納付すべき税額四二億六一九一万三九〇〇円を超える部分、及び、過少申告加算税賦課決定処分のうち、税額一一八万五〇〇〇円を超える部分を取り消す。

四  被控訴人が平成二年一二月二五日付けで控訴人会社の昭和六二年一〇月一日から昭和六三年九月三〇日までの事業年度の法人税についてした更正のうち、納付すべき税額四〇億六〇一一万四七〇〇円を超える部分を取り消す。

五  被控訴人が控訴人会社に対し昭和六三年一二月二〇日付けでした昭和五九年一二月分、昭和六一年一一月分、昭和六二年四月分及び同年八月分の源泉所得税納税告知処分並びに同税不納付加算税賦課決定処分を取り消す。

六  被控訴人が控訴人会社に対し平成二年一一月二八日付けでした昭和六二年一一月分の源泉所得税納税告知処分並びに同税不納付加算税賦課決定処分を取り消す。

七  被控訴人が平成元年四月二〇日付けで控訴人正士の昭和六一年分所得税についてした更正のうち、所得税額一億一八九四万二四〇〇円を超える部分を取り消す。

八  被控訴人が控訴人正士に対し平成元年四月二〇日付けでした昭和六二年分所得税の更正処分を取り消す。

九  被控訴人が控訴人正士に対し平成三年一月一四日付けでした昭和六二年分所得税の再更正処分を取り消す。

一〇  被控訴人が平成元年四月二〇日付けで控訴人静江の昭和六一年分所得税についてした更正のうち、所得税額二八二万五八〇〇円を超える部分を取り消す。

一一  被控訴人が控訴人静江に対し平成元年四月二〇日付けでした昭和六二年分所得税の更正処分を取り消す。

一二  被控訴人が平成三年一月一四日付けで控訴人静江の昭和六二年分所得税についてした更正のうち、所得税額二三七万三七〇〇円を超える部分を取り消す。

第二事案の概要

次に補正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第二記載のとおりであるから、これを引用する。

一  六枚目裏の五行目と六行目の間に次のように加える。

「(5) なお、昭和六二年九月期分法人税及び過少申告加算税中には、原告会社が海外投資等損失準備金の益金に算入すべき二六六〇万円の更正部分が含まれており、これに関する法人税の更正及び過少申告加算税の賦課決定については争わない。そして、この部分の更正結果による原告会社の納付すべき法人税額は、四二億六一九一万三九〇〇円であり、その更正の結果賦課されるべき過少申告加算税は、一一八万五〇〇〇円である。」

二  七枚目表五、六行目の「加算」を「減算」に改める。

三  七枚目裏の一行目から四行目までを次のように改める。

「(1) 被告は、原告会社の昭和六〇年九月期分二五〇〇万円及び昭和六二年九月期分九一〇〇万円の前記寄付金合計一億一六〇〇万円が原告正士に対する役員賞与であるとして、昭和五九年一二月分一六六三万一二五〇円、昭和六一年一一月分一六二四万九九九二円、昭和六二年四月分二一四五万円、同年八月分二一四五万円の合計七五七八万一二四二円について、別表五の納税告知欄及び賦課決定欄記載のとおり、源泉所得税の納税告知及び不納付加算税の賦課決定の各処分をした。」

四  七枚目裏六行目の「役員賞与であるとして」の後に「、昭和六二年一一月分一九三七万九九九四円について」を加える。

五  八枚目裏五行目の「被告は」の後に「、前記の昭和六二年四月六日と同年八月一一日支出に係る寄付金合計六六〇〇万円が原告正士に対する役員賞与であるとして、六六〇〇万円から給与所得控除額を控除した六二七〇万円を給与所得として総所得金額に加算し」を加える。

六  九枚目表一行目の「被告は」の後に「、さらに、前記の昭和六二年一一月一一日支出に係る寄付金三四〇〇万円が原告正士に対する役員賞与であるとして、三四〇〇万円から給与所得控除額を控除した三二三〇万円を給与所得として総所得金額に加算し」を加える。

七  九枚目表一一行目の「あるので」の後に「、原告正士の前記2の(一)(2)の計算によって、原告正士の総所得金額を算出し、これに基づき」を加える。

八  一〇枚目表一行目の「あるので」の後に「、原告正士の前記2の(二)(2)の計算によって、原告正士の総所得金額を算出し、これに基づき」を加える。

九  一〇枚目表一一行目の「被告は」の後に「、原告正士の前記2の(二)(4)の計算によって、原告正士の総所得金額を算出し、これに基づき」を加える。

一〇  一〇枚目裏九行目の「更正処分」の後に「及び平成三年一月一四日付けの昭和六二年分所得税の再更正処分」を加える。

一一  一一枚目表の記(一)の前に次の文章を加え、記(一)を記(二)に、前記(二)を記(三)に改める。

「(一) 原告正士は、被告が同原告の昭和六二年分の所得税について、平成三年一月一四日付けでした再更正の取消を求めるが、右再更正は、被告が平成元年四月二〇日付けでした更正に係る納付すべき所得税額を減額するものであり、その実質は、当初の更正処分の変更であり、それによって、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分であるから、納税者としては、右再更正処分の取消しを求める訴えの利益はなく、不適法である。」

一二  一一枚目裏九行目の「本件更正処分」を「昭和六〇年九月期分及び昭和六二年九月期分並びに昭和六三年九月期分に係る各更正処分」に改め、一二枚目表一行目の「一切せず」を「撤回ないし取消して」に改め、一二枚目表三行目の「本件更正処分等」を「右更正処分等」に改め、同六行目の「昭和六〇年九月期分及び昭和六二年九月期分」の後に「並びに昭和六三年九月期分」を加える。

第三争点に対する当裁判所の判断

各争点についての当裁判所の判断は、原判決の「事実及び理由」欄の第三記載と同じであるから、これを引用する。ただし、次のとおり補正する。

一  一四枚目表四行目と五行目の間に次のように加える。

「三 被告が原告正士に対してした平成三年一月一四日付けの昭和六二年分所得税の再更正処分について

原告正士は、被告が同原告の昭和六二年分の所得税について、平成三年一月一四日付けでした再更正の取消しを求めるが、前記当事者間に争いのない事実(原判決の第二の争いのない事実)によれば、右再更正は、被告が平成元年四月二〇日付けでした更正に係る納付すべき所得税額を減額するものであるところ、減額再更正処分は、それより減少した税額に係る部分についてのみ法的効果を及ぼすものであり、それ自体は、再更正処分の理由のいかんにかかわらず、当初の更正処分とは別個独立の処分ではなく、その実質は、当初の更正処分の変更であり、それによって、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分であるから、納税者としては、右再更正処分の取消しを求める訴えの利益はなく、専ら減額された当初の更正処分の取消しを求めれば足りるので、右訴えは、訴えの利益がなく、不適法であるから、却下を免れない。」

二  一四枚目裏九行目の「被告」を「原告ら」に改める。

三  一五枚目表四行目の「第六二号証」の後に「、第七七ないし第七九号証、第八五、第八六号証」を加え、同七行目の「証人」を「「原審証人」に改め、同行目の「各証言」の後に「、当審証人井久保武二、同岩本弘、同林俊行」を、同行目の「原告正士本人尋問」の前に「原審での」を加える。

四  一五枚目裏三行目の「この会社を継承し、漸次これを発展させ」を「右事業を継承し、昭和四四年法人成りさせ」に改め、同行目の「原告会社」の後に「(多数の子会社及び関連会社を有する。)」を加える。

五  一六枚目裏一〇行目の「工事が」から一七枚目表一行目末尾までを「昭和五九年一一月から改築工事が開始され、十二神社は昭和六〇年一〇月、人丸神社もそのころ完成した。起工式には、原告会社役員が出席し、落成式には、原告正士及び原告会社役員が出席した。」に改める。

六  一七枚目表四行目の「、社主部門の寄付として」を削り、同六行目の「支払われた」の後に「(これらの小切手振出時に作成された振替伝票にコード「1901」の記載がなされており、これは原告正士を示すコードである。)」を加える。

七  一九枚目表末行末尾に「起工式には、原告会社役員が出席し、落成式には、原告正士及び原告会社役員が出席した。」を加える。

八  一九枚目裏五行目の「支払われた」の後に「(これらの小切手振出時に作成された振替伝票に原告正士を示すコード「1901」が記載されている。)」を加える。

九  二一枚目表一行目から二二枚目裏六行目までを次のように改める。

「2 以上認定の事実関係(とりわけ、<1>原告正士の本件各寄付発言を契機に、十二神社人丸神社改築奉賛会や立岩八幡神社御造営奉賛会が発足し、各神社改築工事計画が練られ、そうするうち原告会社の取締役会の本件各寄附金支出決議がなされていること、<2>原告正士を示すコード「1901」が本件各寄附金支払いのための小切手振出時原告会社で作成された甲一一号証、一四号証、一七号証、二一号証及び二五号証の振替伝票に記載されているのは、これらの小切手が原告正士関係費用として振り出されたことをおのずから物語っていると考えられること、<3>原告正士を寄付者とする芳名碑・顕彰碑の建立や感謝状の贈呈につき、本件税務調査が開始されるまで原告正士や原告会社の異議が述べられず、了承されていたと考えられること)を総合すれば、本件各寄付の合意は、原告正士がなしたものであり、原告会社は、原告正士のために各寄付金を負担して各奉賛会に支払ったものと認めるのを相当とする。甲一三号証、一六号証、二〇号証、二四号証及び二八号証の本件各寄付の領収証や受領証のあて名が原告会社になっているのは、原告会社振出の小切手が交付されたことによるものと考えられ、各起工式や各落成式に原告会社役員が出席したのは、原告正士の名代ないしお供と考えられるから、これらの点は、右認定を妨げるに足りない。また、甲七六号証によれば、八幡神社奉賛会が徳島県公安委員会に届け出て許可を得た寄付者名簿に一億円の寄付者として原告会社の記載がなされている事実が認められたり、甲八八号証によれば、八幡神社他奉賛会出納帳に合計一億円の寄付者として原告会社の記載がなされている事実が認められるけれども、どのような事実認識の下にかかる記載がなされたものか不明であるから、これらの事実も、前記認定を妨げるには足りない。」

第四結論

よって、原判決中、被控訴人が平成三年一月一四日付けで控訴人正士の昭和六二年分所得税についてした再更正処分の取消請求を棄却した部分を取り消して、右請求に係る訴えを却下し、その余の本件控訴は理由がないから棄却することとする。

(裁判長裁判官 渡邊貢 裁判官 豊永多門 裁判官 豊澤佳弘)

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